5人これから

こんな子育て、こんな家族がありますという話。

新聞奨学生:隣の家の前も掃除するのはどうしてか

長男が新聞配達奨学生として働いていたときのこと。

わたしは息子からきいたことしかしらない。

このまえ、長男に当時のことをきいてみると、わたしより覚えていない。

2年間の生活で彼は随分変わったので、奨学生になりたてのころの記憶薄くなった?

 

怒られてばかりいる

住み込みで働くようになった子に、

親がしょっちゅう連絡をするのはどうかなぁと思い

こちらからの連絡は、週1ぐらいに抑えていた。

 

その定期連絡のとき「怒られてばかりいる」と言っていた。

 「ある程度」がわからない

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rawpixelによるPixabayからの画像

 

毎日の仕事、作業台の上にある使わなかった新聞

ある程度たまると下にずらすらしい。

そのある程度がわからないという。

 

どのくらいかをきくと「そのくらいわかるだろう」と教えてくれない。

これくらいかと思ってずらすと「まだ早いだろう」と怒られる。

怒られるからそのままにしておいたら「いい加減に片付けろ」と怒鳴られる。

どうしたらいいのかわからない。

いちいち聞いてうるさいとも言われる。

 

今なら、様子を想像するだけで涙が出てくるが

そのときは、こちらも「きたー」という感じ。

 

ききやすい人はいないか?

きくタイミングはどうか?

そんなやりとりをしながら

あなたは間違っていない、分からないならきくしかないと答えたような気がする。

 

 高校以降、特に目立ったトラブルはなく登校し、週末は新聞配達のバイトをしていた。

わたしの見えるところで、曖昧な言葉が伝わらない様子は見ていなかった。

「ちゃんと」「しっかり」など、曖昧な言葉がよくわからないのは、発達障害ではあるあるだが。

やっぱりまだしっかり発達障害だったか、と変に納得。

 納得がいかない、意味がわからない

朝、販売店の前を掃除していると社員に「隣の家の前も掃除しておけ」と言われた。

なんで隣の家の前を掃除しないといけないのか

社員に、どうしてかをきくと

「いつもお世話になっているんだから、そのぐらいしてもいいだろう」と言われた。

 

そんなの必要ないだろう

意味がわからないと息子は言う。

 

わたしは、

朝早くから配達でうるさいだろうし

人の出入りも多い、

こちらの知らないところで我慢していることもあるかもしれない。

家の前を掃除してくれると、気を使っていると周囲に分かり

ちょっとした近所とのトラブル予防にもなる。

行いで表すごあいさつで、コミュニケーションのひとつで大切なこと。

意味はわからなくても、それが給料のうちと思ってやるしかない。

と言ったと思う。

 

長男は、

隣の人は何かをしてくれるわけではない。

もともと販売店が隣と分かっていて住んでいるはずだ。

だいたい朝掃除しているのなんてだれも知らない。

意味がない。

と、わたしにいらいらした声色で話してくる。

 

そういう話をききながら、

売店の人、うちの子、使いにくいだろうなぁ~

話しの通じなさに、ため息をついていそう~

いらつく周囲の様子が目にみえるようだった。

 そして、この子、いつまで持つだろうか・・・と思った。

一人立ちは早かった?  

新聞配達なら働けるかと思ったけれど、いきなり住み込みは無謀だったかな。

 

もし、販売店に配慮して! なんて言ったとしても、

こちらの言おうとしていることが伝わるとは思えず

長男の居心地が悪くなるだけではないかと思った。

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正しい正しくないを決めるのはだれか 

合理的に考えると

隣の家の前を掃くことに、意味はないかもしれない。

毎朝掃いていても、うるさかったら、隣の人は静かにするよう苦情を言うだろう。

見ているかどうかわからない朝の掃除をするより、

直接、いつもうるさくなってすいませんと言えばそれでよいともいえる。

 

店長が、今までのつながりを気にせず、合理的なものの考えを実践している人なら

隣の家の前を掃除する従業員を見たとき「何やっているの、そんなご機嫌とりしないで仕事しな」と言うかもしれない。

 

正しいか正しくないかは、決まった正解がない場合が多いように思う。

そのときの責任者・・・政治家、社長、校長、家長の意向に左右されるのだから。

アッシュの同調実験

社会心理学者のソロモン・エリオット・アッシュの同調実験がある(1951年)。

7名1組の集団に、視覚実験と称して三つの比較線分の中から、先に示された標準線分と同じ長さのものを選ぶという課題が与えた。この課題は通常誤反応が0.7%という非常に単純なものであった。

実験では、7人のうち6人がサクラで故意に誤答を繰り返した。その結果真の被験者(実験を受けている人)123名全体として37%の誤答が発生した。<心理学大辞典より抜粋>

 

手っ取り早くいうと、

周りの人が間違っていることを正しいと言うと、明らかな正しい答えがあるのに37%の人は間違いを正しいと言う。

この実験には続きがある。

 

集団の斉一性について

8人グループで、

明らかな誤答を言うさくらが6名、正答をいうさくらが1名いる場合は、

被験者(実験を受けている人)の同調率は5.5%に低下。

明らかな誤答を言うさくらが6名、他の違う誤答を言うさくらが1名いる場合は、被験者の同調率は5.5%前後。

ここからわかることは、

多数派への同調行動を低めるのは、支持する人がいるかどうかではなく、集団の1枚岩が崩れることにある。

言い換えると、他の変わり者がいると別の変わり者も存在できる。

<現代の社会心理学.亀田達也・村田光.放送大学教材.2004 より抜粋>

 ASDの強味

ちょっと話は飛躍しているが、アッシュの実験と関連付けて

  • 人はいつでも正しいことを主張できるほど強くはない。
  • 世のなかの価値基準が変わるには、集団の中で意見を言う人が増えることが必要。
  • ASDは、矛盾に気づきやすい。「納得できない」と声をあげるASDは、社会を変える可能性をもっている。
  • ASDが、他の人より言いにくいことを言うのは、人の思いや全体像が見えていない場合が多い。この人とのずれは、強味ともいえる。

~とわたしは思います。

長男に望む仕事での態度

このときの長男の考えを「困るな」とは思うが、100%否定する気にはならない。

誤解のないようにあえて書くが、わたしは隣の家の前を掃除するのはとても良いことと思っている。

理由はわからなくても、法律に反しない範囲で気持ちよく従える人であってほしい。

 

合理的な彼は、家でもときどき的を得たことをいう。

社会にあっても、建設的で批判ととられないような言い方やタイミングを覚えると、理解者が増え、必要な人材になると思う。

ただし、そのときまでに、自分の話に耳を傾ける人がいる、話すことは無駄ではないという実感を保てていれば。

 

・・・この販売店で、さまざまな経験をして、世の中で働けるようになりました。

売店さまさまです。

その経験のエピソードはまた今度。